鬱映画レビュー(邦画編)

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リリイ・シュシュのすべて(2001年) 監督:岩井俊二

 

鬱映画なんだけど人によってはただの鬱映画じゃない気がする。あと何となく日曜日の夜に見るのは避けた方がいいかも。というようなことを思いながら日曜日の夜にこの文を書いてる。

 

思春期特有の不安定さがたくさん詰まってて心がざわつく。ちゃんと青春できてた人にはただただ見るに耐えなくて響かないかもしれない。

 

綺麗な音楽と風景が物語と矛盾しててその違和感に心を蝕まれるんだけど、たまにそれらが不思議とリンクした瞬間が見えたような気がして、まるで台風一過の夕焼けのような、物凄く眩しくて美しい何かを目の当たりにしたときに限りなく近い気持ちになった。

 

初めて見たときは陰鬱な自分と通ずる部分を重ねて心が沈んだのだけど、同時にどこか救われたような気がした。見たら落ち込むと分かってても今でもたまに見返したくなる特別な映画。

 

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②告白(2010年) 監督:中島哲也

 

自分が映画好きになった原点。中学のとき見て衝撃受けた。原作から入ったんだけど、実写も負けず劣らず映像ならではのよさが光ってる。


ラストは本来恐怖するシーンなのに自分はなぜか泣けた。

多分森口先生の我が娘を奪われた行き場のないやるせなさと修哉の暴走した孤独感の末路にどこか共感したのと同時に、最後の一言で放たれたサイコな台詞から余りにもお洒落なセンスを見出せてしまったからだと思う。凄いものに出会うと感動してしまうあの感覚。それ程松たか子さんの表情と声色と相まって物凄くウィットに富んでた。

そんないくつかの感情が混じり合って訳分かんない初めて流す涙が出た。

 

あとこの映画、実はのん(能年玲奈)ちゃんがこっそりと脇役で出てる。

純情可憐なのんちゃんのイメージとは真逆で学級崩壊の一端となる生徒を演じてる。いじめの傍観者らしい悪に満ちた笑顔を所々で浮かべてておっかね〜ってなった。

 

個人的に物凄くおすすめの一本。苦手な人はとことん苦手な映画かもしれない。

 

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③ゆれる(2006年) 監督:西川美和

 

観終わってゆれるというタイトルに納得がいく。

ラストシーン、香川照之の浮かべた笑みはどっちの意味?それともさらに解釈のしようがあるのか。

自分は突然訪れた久しぶりの再会に思わず無意識的に、本能的に笑みがこぼれてしまっただけで、弟とは決別の選択をしたのだろうと思った。

 

人によって感じ方は多種多様なはず。他の人はどう感じたのか語り合いたくなるそんな映画。

とにかくラストが必見。香川照之が余りにも名演技すぎて震えた。

 

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ミスミソウ(2018年) 監督:内藤瑛亮

 

原作を読んだことがあったから気になって鑑賞。

 

真っ白な雪景色に不謹慎ながらも真っ赤な鮮血が不気味に美しく映える。


途中からあれ?って思って注意して見てたんだけどやっぱりそうだった、登場人物の目が全員淀んでる。でも春花と妙子が仲睦まじく教室ではしゃいでる回想シーンと妙子に過ぎ去りざまに頑張ってって手を振られたときの流美の目だけは希望を見出してこの世にちゃんと生きてる人の目だった。そこが割と印象に残った。


クラスの連中が春花に常軌を逸するまでのいじめをするのもそれぞれ訳ありなバックボーンがあるからなんだけど、だからと言ってそこまでするかね。。ちょっと現実離れしすぎててその辺は入り込めなかったかなあ。まあ映画だからいいんだけど、ツボが合わなかったというか何と言うか。でも行き過ぎてたけど一番理解できたのは南先生の気持ち。乱しながら中学校生活をやり直したいって訴えかける場面は胸が締め付けられた。


本当に終始ただただ胸糞悪くて、開始2分で観なきゃよかったって思ったけどラストの映画オリジナルシーンであ、やっぱり観てよかったかなって少し思っちゃった。自分はあの終わり方悪くないと思ってる。


主題歌が劇中のあるシーンで突然流れるんだけど、まるで物語のどんよりした重い空気を強引に切り裂くように、鍵盤を力強くぶっ叩くピアノの音が無理矢理感情を揺さぶってくる。ピアノの旋律に突然胸ぐらを掴まれてお前はどう感じる?って脅されながら問いかけられた気がした。終わってから妙にその歌が気になっちゃって歌詞を見たら思わず泣いた。主題歌の歌詞を調べるまでがこの映画の醍醐味だと思う。


あと全く関係ない話だけど中学校の頃の音楽コンクールでピアノを全く弾けない子が謎に伴奏者に選出されていつも静かなその子は言われるがままに受け入れちゃったことがあった。その結果案の定練習のとき全員分かり切ってるくせに弾けねえじゃねえかあははってバカにした笑いが起きた。結局早急にピアノを弾ける子が代役を務めて何事もなく終わったんだけど、映画を観てる途中この記憶が久し振りに蘇った。中学生くらいのときって多くの人が異質なものに理解を示せなかったり、何かしらの晒し上げる対象を見つけて自分の未熟さや至らなさを必死で隠してるんだろうな。